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【編集長のつぶやき vol.466】 「都市住宅学」最新号のメインテーマ「鉄道会社と沿線まちづくりの課題と将来」に思う。
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2017.05.10 Wednesday 00:00
2017.05.10
先日、都市住宅学会の学会誌「都市住宅学」の最新号が届きました。
今号のメインテーマは、「鉄道会社と沿線まちづくりの課題と将来」です。
当サイトでも、鉄道資本によるまちづくりや地域振興については、長らくシリーズ掲載しているだけに(最新は4月26日の第三セクター鉄道は、新たな「鉄道資本」へと進化できるのか?)、非常に興味・関心の強いテーマでした。
主に大都市圏で鉄道資本が果たしてきた役割や機能については、ここでも何度かお話してきたので(まあ、一般論ですけど)、あえて割愛しますが、今後に掲載されている論文も、その多くは大都市圏でのまちづくりがテーマです。
さて、今号を読んでみての結論から言うと、正直、物足りない印象を受けました。
「少子高齢化」「コンパクトシティ」「外部効果の内部化」など、大都市圏・過疎地域を問わず、共通する課題や問題意識について、現状と将来展望を述べているという部分では、分かりやすく、いちいちもっともな内容なのですが、基本的には「大都市圏の大手鉄道事業者」のお話です。
大都市圏の大手鉄道事業者は、「放っておいても大丈夫」とまでは言いませんが、「選ばれる沿線」を目指した各種の取り組みや、「座れる電車」、既存事業との相乗効果を前提とした農業や福祉関連産業への進出など、着々と「次の一手」を打ってきました。
むしろ、より問題が深刻なのは、JRや私鉄、第三セクターを含む大小様々なローカル線です。
これも繰り返しになりますが、地域が置かれている状況如何では、鉄道事業を必ずしも「存続させなければならない」とは思いません。
ただ、鉄道の存続を前提としたまちづくり(或いはむらづくり)を考察するのであれば、大都市圏の大手鉄道事業者のケーススタディーは、ある種の事業モデルとしては参考にはなるとしても、やはり事業主体のボリューム感の違いは大きいですし、貨物輸送や観光列車、比較的長距離を結ぶ都市間輸送への依存度の高さなど、置かれている状況も大きく異なります。
同じ鉄道事業でも、大都市圏の大手鉄道事業者とローカル線の事業主体では、収益構造的には別の業態?と言えるかも知れません。
本号のテーマに期待していたのは、「外部効果を内部化」するための多角化という点で、ローカル線の事業主体に向け、大都市圏の大手鉄道事業者には無い、新たな視点や事業提案のようなものでした。
まあ、この学会誌自体の発行主体が、交通系の学会ではなく、都市住宅学会であるため、大都市周辺の宅地開発に主眼を置かざるを得ない部分で、限界があったことは重々承知はしているのですが。。。
このテーマのお話は、今後もまだまだ続きそうです。
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