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【編集長のつぶやき vol.488】 「図書館観光」「観光図書館論」は、まだまだブルーオーシャン?
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2017.07.31 Monday 00:00
2017.07.31
前回は、地域の図書館が「観光資源」としてもっと注目されるべき、というお話をしました。
そこで今回は、先達の知見に「図書館観光」の研究に関する系譜が無いだろうか?というお話です。
さて、「図書館観光」というキーワードをネットでサクッと検索すると、公益財団法人日本交通公社の「旅の図書館」がヒットしました。
こちらは「図書館観光」に関する研究論文ではなく、まさに旅に関する専門図書館のこと。
現在は東京・南青山にありますが、かつて東京駅すぐの八重洲にあった際は、何度となく資料収集で訪れたことがあります。
しかし、お目当ての文献となると、そのフックとなるのは、図書館と観光:その融合がもたらすもの/松本秀人(北海道大学観光学高等研究センター、2010年)くらいしか見当たりません。
その頁下段には、参考文献も多数記載されてはいるのですが、いわゆる図書館学や観光学、まちおこし論など、論を講じるうえでの「構成要素」的な文献ばかりで、「図書館観光」そのものを論じた過去の文献が見当たらないのです。
逆を言えば、松本氏が2010年に上述の文献を発表する前後まで、「図書館観光」に関する体系的な研究が「いかになされてこなかったか」ということなのかも知れません。
ただ、これには一部、反論?らしきものもありました。
例えば、原典がかなり古いこともあり、ソースとしては孫引きとなってしまうのですが、南益行「観光図書館論」(1954年、情報元:Trabeling LIBRARIAN-旅する図書館屋)です。
その内容は、雑誌「図書館界」に掲載された2頁ほどの小論ながらも、現在の「図書館観光」を考察するうえで、極めて先見的な試論のように思えました。
さらに検索してみると、松本氏と旅する図書館屋氏の2人には、辛うじてネット上の接点があったようで、若干ながらそのやりとりを垣間見ることができます(観光と図書館)。
今回、関連するキーワードをサクッと検索してみて、あらためて感じたことがありました。
ひとつ目は、ネット上での検索には、かなりの部分で「限界」があるということ。
参考文献の入口までは到達できても、そこから先は、「紙の本」や、学会発表やヒアリングなど、オフラインでの取材・情報収集が相当程度、必要となります。
自然科学系の論文等については事情が異なるかも知れませんが、「ネット上で世界中の最新の研究論文が全て簡単に手に入る」なんてのは、ネットメディアが作り出した幻想なのかも知れません。
そしてもう一つは、図書館学や図書館情報学といった、「未知の領域」が目の前に立ちはだかったということ(笑)。
以前からその存在は知ってはいましたが、恐らくその内容は、分類学や年代学、情報学といった類の、「図書館司書を養成するための講座」といった程度の認識でした。
正直、今から未知の海原を航海するのは骨が折れますが(笑)、「図書館観光」についてはまだまだブルーオーシャンと言えるでしょう。
この海原は今後、避けて通れない航路のひとつだと思ったりもしました。
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