【編集長のつぶやき vol.423】 「界隈(かいわい)」が消滅すれば、「まち」も消滅する。「まちおこし」の最終形は「界隈(かいわい)」の復権。
2016.12.26 Monday 22:10

2016.12.26

今回も、少々古い本を久々に読み返してみました、というお話しです。

 

今回久々に読み返してみたのは、材野博司著「かいわい[日本の都心空間]」(鹿島出版会)という本。

初版が1978年1月、購入したのは1993年6月の第六版です。

 

既に第六版の時点で初版から15年も経っていたのですが、とくに新板・改訂版ということでもなく、掲載されているデータは古いままなのですが、今読み返してみると、第六版からさらに20年以上が経った現在でもなお、一定の普遍性がある内容に思えました。

 

そもそも「界隈(かいわい)」というコトバ自体、「地域」を指し示すコトバとしては非常に曖昧模糊としているのですが、話し手も聞き手も「曖昧模糊とした」状態であることを暗黙の了解のうえで受け入れ、双方ともに明確な定義を持たずして、あるいは意識すること無く、阿吽の呼吸?のごとく自然に使ってきたようコトバのような気がします。

 

また、「界隈(かいわい)」は、必ずしも街区などで明確に区切られた地理的概念ではなく、人々が個々にバラバラに思い描く「イメージの世界」でもあり、場合によっては喧騒やパレードといった「状態」を指すものだったりもして、つかみどころの無い、ある意味で時空を超えた?対象物なのかも知れません。

 

故に、「界隈(かいわい)」には、常に予想できない驚きがあり、買い物など何か用を足す場所、という以外の「何か」が潜んでいます。

ある意味、まちの魅力が凝縮されている空間(のようなもの)と言えるでしょう。

 

同書では、この「界隈(かいわい)」というモンスターのような?対象物を、歴史的変遷や、発刊当時の豊富な事例、多面的な考察などにより、かなり明快にあぶり出していたように思えました。

 

 

ただ、同書で考察されている「かいわい」は、あくまでも「人が歩いて移動する範囲」を前提としたもの。

現在ではせいぜい、政令指定都市規模の都市でないと、そもそも「人が歩いて移動する範囲」としての「かいわい」は存在し得ないほど消滅しています。

県庁所在地規模の都市であっても例外ではありません。

 

こうなると、新たな「かいわい」として考察の対象となるのが、いわゆるロードサイトといった「人が車に乗って移動する範囲」や、ショッピングモール・アウトレットなど主に郊外に立地する「囲い込まれた巨大施設内」と言えるでしょう。

 

しかし、著者が「『かいわい』は、人と物が密度高く織りなす綾である」と言っているように、人と物が低密度に拡散したロードサイトから「界隈(かいわい)」が生成されるとはとても思えません。

また、ショッピングモールやアウトレット内の「広場」や「通り」がどれだけ賑わっていようと、特定の事業主体によって完全にコントロールされた地理的空間が「界隈(かいわい)」かと言われれば、それもまた違うような気がします。

 

日本の中小都市がかつての魅力を失ったように見える原因の大部分は、この曖昧模糊とした「界隈(かいわい)」が消滅したことに起因しているのではないでしょうか。

それは単に商店街がシャッター通りになって活気が無くなった、という次元の話ではありません。

 

現地を直接見たワケではありませんが、ヨーロッパでは比較的小さな町にも人々が歩いて集まる広場があり、バルのようなオープンな飲食店舗空間があり、日本的な「界隈(かいわい)」ではないにしろ、そこには小規模ながらも「人と物が密度高く織りなす綾」が感じられます。

そこで交わされる「綾」は、他愛のない日常会話かも知れません。

 

同書を読み返してみて、まちおこしが目指す姿は、あらためて「界隈(かいわい)」の復権にあり、と強く思いました。

 

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新規ホテルのレセプション。一風変わったレイアウトでパンとコーヒーを提供。 【2016年03月 東京都港区】
2016.12.22 Thursday 00:00

2016年3月にオープンしたホテルのレセプションにて。

フロントとカフェがシームレスに繋がったエントランス部分で、パンやコーヒーなどが振る舞われた。

このメタリックなテーブル、この場所に常時この状態で設置されているものではないらしいが、他のホテルではちょっと見ないレイアウトが印象的。

 

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【編集長のつぶやき vol.422】 宿泊施設・飲食店のフードロス削減は、「出口」よりも「入り口」で貢献できる?
2016.12.21 Wednesday 00:00

2016.12.21

近年、この国ではいわゆる「フードロス」が大きな問題となっています。

フードロスとは、製造から販売に至る複数の段階で、賞味期限切れなど様々な理由で「廃棄」される食品のこと。

 

こうした中、主に賞味期限切れ間近の食品など、フードロス寸前?の食品のみをネットで販売する会社が話題となっています。

この会社、こうした食品を単なる「ワケありの安売り商品」として扱うのではなく、商品の「ブランドイメージ」を落とさないよう、一般の販売店よりもロット数を大きくしたり、販売が終了した商品は即刻サイトから削除したり、売上の一部を慈善団体に寄付したりと、様々な工夫で急成長しているのだとか。

今のところ、取扱商品は特定の高級食材に限られているようですが、フードロス削減に貢献し、なおかつ慈善団体も潤うという、素晴らしいビジネスモデルだと思いました。

 

さて、商品のブランドイメージを落とさないまま、フードロス寸前の食品をうまく販売する。。。

ここであることに気が付いた人もおられるでしょう。

 

ブランドイメージを毀損する最大の要素は、価格を「単純比較」されてしまうことです。

であれば、その「食材」の価格を単純比較できないように販売する方法があるじゃないですか!

 

 

そうです。

宿泊施設や飲食店が、メニューのひとつとして提供する方法です。

その食材が調理加工されてしまえば「原価」は分からないですし、調理加工しない場合でも宿泊施設が「お土産」として宿泊プランに含めてしまえば、同じく「単純比較の土俵」には乗りません。

 

もちろん、宿泊施設や飲食店で消化し切れる食品は限定的だとは思いますが、豊作で取れ過ぎた地場の農産物や、数量が不安定な海産物などは、地域性の強い「期間限定メニュー」として、売りになる商品になるはず。

 

極論すれば、取り扱う食品は必ずしも地場産品である必要はありません。

モノさえ良ければ、輸入業者が抱えて困っている「在庫」を安く仕入れ、期間限定メニューに仕立てることも可能だし、話題づくり・ネタづくりの「おまけ」として付けたってよいワケです。

 

ただ、ひとつ矛盾?があるとすれば、こうした食品を使用することで、宿泊施設や飲食店が、販売の現場で新たなフードロスを発生させてしまう可能性があること。

とくに「宴会系」のフードロスは、見るに耐えないですよね。。。

 

しかしそれでも、倉庫に溜まっている食材が全く使われずに廃棄されることに比べれば、多少なりともヒトサマの胃袋に収まるワケですから、一歩前進なのかと。

さらに、宿泊施設や飲食店の現場で完売・完食してもらえればなおよいワケです。

 

もちろん、生産者、食品の製造・流通事業者、宿泊・飲食業それぞれが抱える固有の事情やハードルは多々あるとは思いますが、事業者間のマッチングや商品のちょっとした組み換え?如何では、フードロスの削減が大きく進みそうに思いました。

 

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マチナカで軒先?をかすめるような岳南鉄道・吉原本町駅。 【2015年07月 静岡県富士市】
2016.12.20 Tuesday 00:00
富士市の中心市街地のひとつ「吉原」の最寄り駅、岳南鉄道「吉原本町駅」。

駅を出るとすぐにアーケードが連なる商店街があるのだが、駅前広場などは無く、駅舎自体も軒先をかすめるような簡素な造り。

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【編集長のつぶやき vol.421】 松武秀樹氏の名曲「Unit」。時代錯誤な「映像」を被せただけで、かくも新たな「作品」になるとは。。。
2016.12.19 Monday 00:00

2016.12.19

最近、youtubeを見ていると、約30年振り?の映像や音楽に「邂逅」しまうことが多く、それが「悩みのタネ」となっています(笑)。

同じ曲目やアーティスト名で検索すると、これまでに見たことが無いバージョンやカバーが芋づる式に出てきて、見だしたらキリが無いんですよね。。。

 

さて今回、図らずも「邂逅」してしまったのは、松武秀樹氏率いる音楽ユニット「Logic System」のアルバム「Logic」の中で、特に印象深い「Unit」という曲です。

 

松武氏と言えば、視界に強烈に焼き付いて離れないのは、YMOのマニュピレーターとしてステージに立っていた当時の「あの姿」でしょう。

ギターやキーボートを弾くでもなく、ドラムを叩くでもなく、ボーカルやコーラスをするでもなく、ステージ上段中央で「箪笥」と呼ばれていた巨大な分電盤のような装置をいじるその姿は、楽器の演奏者ではなく、まさに「技術者」そのものでした。

 

ステージに立って「演奏」するマニュピレーターという「職種」を確立したのはある意味、松武氏だったと言っても過言ではありません。

1980年当時、日本武道館で行われたYMOのコンサートの模様は、テレビでも放映されたので(後に発売されたビデオはもちろん?買いました)、印象に残っていた人も多いとは思いますが、あのテレビ放映は、マニュピレーターという「技術者」が「アーチスト」になった瞬間だったような気がします。

 

なお、あのコンサートは、テレビ放映と全く同じ音源・素材ではないものの、FMラジオでも放送されました。

しかしその音声からは、ドラムやキーボード、ギターを「奏でる姿」や、肉声で「歌っている姿」は想像できますが、舞台上段中央で直接音を出さずに「演奏」しているマミュピレーターの姿は想像が付きません。

「音楽」と「映像」が同時進行で融合して初めて、マニュピレーターという「アーチスト」が誕生したと言えるでしょう。

 

前置きが長くなりました。

今回、youtubeで発見したのは、終戦直後と思われる東京のマチナカのモノクロ映像に、1981年に松武秀樹氏率いる音楽ユニット「Logic System」が発表した楽曲「Unit」をオリジナル盤のまま被せた内容です。

 

 

この曲は、発表当時は当時カセットで、復刻版のCDが出てからはCDでよく聴いていました。

コンサートの映像が放映されたYMOとは異なり、こちらはいずれも映像の無い「音楽」のみの状態です。

 

よって、この曲から思い浮かぶ「映像」は、自分自身が脳内で勝手に思い描く「架空の映像」となるワケでずが、今回youtubeで発見した「音楽+映像」は、自分の脳内にあった「架空の映像」とは全く異なるものでした。

 

「音楽」は1980年代初頭の作品なのに、「映像」はなぜか終戦直後のモノクロ画像。。。

ただしこの映像、明らかに「昔」のモノクロ画像であるにもかかわらず、画質が妙にクリアーなのです。

しかも人が多く行き交う通りを、一定のテンポで後ずさりながら「一人称の自分の目線」で撮影したような、一見すると記録映画のようであって、なおかつ映像芸術作品?のような撮り方となっており、見ているだけでも随分と引き込まれました。

 

一方、楽曲の方は、オリジナル盤にアレンジを加えることなく、カセットやCDで30年に渡り?聴き続けてきたものと全く同じ内容です。

コンピューターを強調したピコピコ音や、意味不明のフランス語らしき散文詩の機会的な朗読(YMOもそうですが、歌詞にはあまり意味は無く、「声」も楽器のひとつ)、階段を無限に登っていくかのような無機質て金属的な旋律は、まさに当時の「テクノ」そのもの。

 

この楽曲から想像できる「脳内映像」は、積み重なって成長してゆくビルの建設シーン、もしくはロボット化された工場で鏡状に輝く半導体が次々と生産されてゆくシーンです。

実際、この「Unit」を含むアルバム「Logic」は、日本の半導体産業などの現状と課題をシビアにレポートしたNHKのテレビ番組「日本の条件 技術大国の素顔」で、BGMとして何曲も使われていました。

 

しかし今回発見した「音楽+映像」は、「何度も聴いてきたお馴染みの楽曲」に「脳内映像とは全く異なる時代錯誤な映像」をただ被せただけであるにもかかわらず、両者が融合することで「全く別の価値を創造した作品」に仕上がっています。

これには30年振りに?ちょっとした新鮮な衝撃を受けました。

 

大袈裟に言えば、ステージで分電盤をいじる姿という「映像」と、YMOという当時最も先鋭的だった「音楽」が融合することで、初めてアーティスト・松武秀樹が新たに「生成」された瞬間に立ち会ったような、身震いするような感覚です(笑)。

 

なお、この「Unit」という楽曲、youtubeには驚くほど多数アップされていますが、物凄い数のカバーやオリジナルの加工作品が出回っているYMOの楽曲とは異なり、音楽は原盤のままで映像だけが異なる、というものが殆ど。

しかも、映像をアップしている人も、それにコメントしている人も、殆どが外国人(英語・ドイツ語・フランス語?)で、なぜか日本人の影がありません。

「世界のTOMITA」の弟子筋である松武氏が、実は「世界のMATSUTAKE」だったのか!と思うと、なんだかちょっと嬉しくなりました。

 

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